シェアリングエコノミー認証マークで具体的にどう安全になるか

シェアエコ事業者向け

シェアリングエコノミー研究家のこういちです。

「シェアリングエコノミー認証マーク」の制度が開始されました。

「認証マークがあると具体的にどう安全なの?」という疑問が沸いてきましたが、各メディアのニュースを読んでも何も書かれていません。

そこで、今回は「結局、認証マークがあると安全なの?」についてトコトン調べてみることにしました。

まずは、認証制度開始のニュースリリースを確認ください↓

シェアリングエコノミーサービスの認証制度始まる

民泊やインターネット上のフリーマーケットなど一般の個人が遊休資産を取引する「シェアリングエコノミー」と呼ばれるサービスが拡大する中、取引を仲介する企業で作る団体が問題のある取引を防ごうと自主ルールを定めてサービスを認証する制度を始めました。

(中略)
こうした中、取引を仲介する企業で作る業界団体の「シェアリングエコノミー協会」が、利用者の間で違法行為やトラブルが起きないようコンプライアンスの自主ルールを定めて各企業の仲介サービスを認証する制度を始めました。
(中略)

この制度では、支払いなどのトラブルに備え利用者の本人確認を行っているかや、法律や倫理上、問題のある取引を行わないよう利用規約で注意を呼びかけているかなどが審査され、適合すれば認証マークを表示できます。(以下略)
引用:“シェアリングエコノミー” サービスの認証制度始まる

第一弾で、認証マークの申請が通ったのは以下の6社、みんなシェアエコ業界では有名な会社です。

  • 株式会社 AsMama(⼦育てシェア)…⼦育てスキル×シェア
  • 株式会社タスカジ(タスカジ)…家事スキル×シェア
  • ランサーズ株式会社(Lancers)…スキル×シェア
  • Uber Japan株式会社(Uber)…移動×シェア
  • 株式会社スペースマーケット(スペースマーケット)…スペース×シェア
  • 株式会社ガイアックス(TABICA)…観光×シェア

これからも続々と認証マークを取得する会社が増えてくるでしょう。

今回の認証マークが日本でシェアエコ普及が加速する流れができそうですね↓

⽇本のシェアリングエコノミー利⽤意向は世界最下位。理由に「事故やトラブル時の対応に不安があるから」

平成28年版情報通信⽩書によると、⽇本・⽶国・英国・ドイツ等の各1,000⼈のモニターを対象に、アンケート調査を実施した結果、⽇本は諸外国と⽐較して、シェアリングエコノミーの認知度 や利⽤意向、利⽤率が総じて低いことが明らかになりました。特に、シェアリングエコノミーのデメリット・利⽤したくない理由として、「事故やトラブル時の対応に不安があるから」という点が諸外国に⽐べて多いことから、サービスを実装していく上での安全性・信頼性の確保や認知度の向上が喫緊の課題となっています。
(平成28年版情報通信⽩書:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc131230.html)

また、2017年5⽉にPwCコンサルティング合同会社が実施した「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2017」によると、国内の⼀般消費者2,000名(シェアリングエコノミー認知者・⾮認知者各1,000名)にシェアリングエコノミーのサービスを利⽤する際の懸念事項を尋ねた結果、すべてのサービスの分野において「事故やトラブル時の対応」が最多でした。また、シェアリングエコノミーについて感じる気持ちとして、「⾏政による規制やルールの整備・強化が必要である」と回答した⼈が半数を超えていました。
(PwC 調査結果:http://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/sharing-economy1707.html)
引用:シェアリングエコノミー認証制度 認証取得サービス第⼀弾を発表

日本人がシェアエコを使わない理由として、「事故やトラブル時の対応に不安があるから」というのが1番の要因です。そんな課題点を解消する為に作られたのが今回の認証制度という経緯でした。

・・・・・。

では本題。

「結局、認証マークがあると安全なの?」について調べてみました。

まずは、シェアリングエコノミー協会のサイト内にあるシェアリングエコノミー認証実施概要を確認してみました。

結果、認証マークはシェア事業者サービス品質の安全性・適法性を担保するものではなく、リスクをコントロールするための体制が整っているかの基準を超えていることを証明するマークであると分かりました。

「実施概要」の中には具体的な基準は掲載されておらず、平成28年11月4日に内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室が発表した「シェアリングエコノミー検討会議 中間報告書」の中のガイドラインに基準が書かれています。

その中から該当部分を抜粋したところ、認証マーク付与基準は「登録事項」「利用規約等」「サービスの質の誤解を減じる事前措置」「事後評価」の4種の事項から42個の基準が明記されていることが分かりました↓

シェア事業者がクリアすべき42個の項目一覧

以下、シェアリングエコノミー検討会議 中間報告書」PDFの43ページ~から抜粋



引用元:「シェアリングエコノミー検討会議 中間報告書」PDFの43ページ~部分

上記の基準をクリアした事業者に対して、「認証マーク」が付与される仕組みのようです。

認証マーク付与基準に対しての見解

シェアリングエコノミーの有名サービスは、上記の基準の9割くらいは必然的に達成しているところが多いのではないのでしょうか。一方で、プライバシーマークの認定基準のような項目も含まれており、100%基準をクリアしようとするといくつかは業務フローの見直しや機能改善に迫られる企業も多いかと思います。

認証基準の中で特に気になった部分についてコメント

>ウ-3(提供者が個人であることの表示)
提供者が個人である場合は、利用者がその旨を明確に認識できるよう表示すること。

この基準は大事ですね。この部分の説明が若干足りていないサービスはまだ見かけることがあります。個人間取引ゆえにマッチング否認だったり、当日キャンセル、基本的には当事者同士でのトラブル解決する世界であることを知らずに、一般的なBtoCサービスだと思い込んで使用すると、期待値の差によってトラブルになる場合があります。

>ウ-5(虚偽情報・規約違反情報の削除)
>マッチングプラットフォーム上に掲載された虚偽の情報や利用規約に反する内容を適切に削除すること。

新規アカウント・新規案件登録時に内容チェックすることはもちろんですが、登録後の「編集機能」で変更を加えられた情報に対してもチェックできる体制があるのかが気になりました。

>エ-3(評価の仕組みの適正性確保)
>低い評価を受けた者が、別人と誤認させる目的で複数アカウント登録することを禁止するなど、評価の仕組みの適>正性を阻害する者を適切に排除するよう努めること。

別メールアドレスで再度登録しようとしても、本人確認書類をもとに再登録を弾くような仕組みは必要です。一方で、低い評価を受けた時に、レビューに正当性があるか反論できる仕組みや、不当なレビューは削除する仕組みも同時に用意する必要があるかと思います。

シェアリングエコノミー認証マーク基準をクリアすれば防げた可能性がある過去の事件例

2014年に、富士見市ベビーシッター事件などで、自称保育士の人物が預かっていた子供を虐待していたとされる事件がありました。ベビーシッター仲介サイトを利用して起きた痛ましい事件でした。

被疑者は5つのハンドルネームを使っており、登録時に身分証明書提出の機能なかったこと。さらに、レビュー評価の機能がなかった状態だったことが、仲介サイトとして持つべき機能が不足していたと言えます。

この不足していた2つの機能(認証マーク付与に必須基準)があれば、「本人確認書類による犯罪抑止力」や、「レビュー機能による2人目の被害者への拡大防止」などの効果が見込めていたはずです。

ベビーシッター(子育てシェア)が危険なのではなく、シェアエコサービスとして必要な機能を提供できていなかったことが危険であったといえます。

マクロな視点で見るとシェアエコは安全・安心な社会につながっている

個人が個人に対してサービス提供するという大前提がある以上、シェアエコ業者がいくら「仕組み」を整えても、個人の悪意や過失を100%防げるわけではありません。シェアエコ使用者全員に、自衛しようとする意識は重要です。例えるなら「深夜にむやみに出歩かない」のが犯罪への自衛であることと同じです。

シェアリングエコノミーは100%安全ではありませんが、社会に普及することで社会全体の事故や事件は減らせる効果があります。

例えば、ライドシェア中に交通事故に遭う可能性はありますが、「運転技術に自信のない人が、自信がある人の車に乗せてもらうこと」「ライドシェアによって社会全体の交通量が減ること」によって、社会全体の交通事故の犠牲者が減ります。

また、子育てのシェア(ベビーシッター)中に、事故で子供がケガをする可能性があります。しかし、母親がワンオペ育児でノイローゼになることを防げると考えると、子育て中の虐待の数はトータルで減らせているとも考えられるのではないでしょうか。

ミクロな視点でのリスクだけでシェアエコを評価するのではなく、マクロな視点で見た時の社会へのプラス効果とのバランスも含めればITを通じた共有経済が根付いた社会は安全になっていくと考えています。

シェアリングエコノミー認証マークでどれくらい安全になるかまとめ

・認証マークは安全性を担保するわけではなく、サービスの仕組みとして必要な機能やルール基準を超えていることを証明している
・「シェアリングエコノミー認証マーク」が付与されたサービスのみを使用しつつ、さらに高評価レビューが多い提供者を選択するなどで自発的な自衛も必要。
・安全基準が高い日本の認証マーク基準を世界に広めていこうとする試みが素晴らしい。(日本人の高い安全志向が日本をシェアエコ後進国にしていました。しかし、日本人が作る認証マークの安全基準は世界でも高いレベルなので逆にシェアエコ輸出国になれる可能性を秘めています)

シェアリングエコノミーは「ゆるやかな自己責任」の世界です。自分で主体的にサービスを選び、主体的にサービス提供者を選んでいくことで、リスクコントロールしながらシェアを活用したライフスタイルを楽しんでいきましょう。

シェアリングエコノミー認証マークの今後の国内及び世界への普及に期待です。また、日本初シェアエコサービスが、世界展開するキッカケになる事を期待しています。